素直に賞賛したいのです。
あぁいいな、素直に賞賛したいWEBサイトに巡り合うことがある。
巡り合うだなんて、随分大げさな言い回しだと感じるかもしれないけど、僕にとって素敵なWEBサイトを見つけることはそのくらいの価値を持つのだ。だって、僕はWEBデザイナーだから。
WEBサイトに関する仕事をしている以上、他の業種の人よりWEBサイトを見る機会が多い。当たり前だけど。
1つのWEBサイトを作り公開するには、規模や内容に関わらずいろいろな苦労がある。チームであれ、ひとりであれ。WEBサイトは、その苦労を乗り越えてようやっと日の目を見るのです。
畑を耕し、種を蒔き水をやる。台風が来れば畑に出向き、イノシシが出れば対策を打つ。
今、目の前にある幕内弁当でひときわ綺麗なオレンジ色を放つ人参だって、そんな苦労を経て収穫されているのだ。
農家を営む友人がいる。以前、その友人が自然と対峙して作物を育てる大変さとおもしろさを話してくれたことがあった。その時の友人は、実にいい顔をしていた。
などと、人参に例えるのが正解かどうかは分からない。ただ、事実として今僕は「ほっともっと」で買った幕内弁当と対峙しているのだ。ご容赦を。
とにかく、そんな大げさ&脱線した冒頭をいったん忘れていただきたい。
僕が巡り合った素敵なWEBサイトを紹介します。
シューズショップ、tartaruga(タルタルガ)
僕は普段いろんなWEBデザインギャラリーサイトを見ている。
WEBデザインギャラリーサイトとは、簡単に言えば「クオリティーの高いWEBサイトを紹介するサイト」のこと。その類のギャラリーサイトは国内外数多く存在するのだけど、掲載方法や選考基準はそれぞれによって異なる。
この間、とあるWEBデザインギャラリーサイトを観覧している時に素敵なサイトと巡り合った。
それが、足の甲の低いお客様の足に合った靴をオーダーメイドで製作・販売している大阪・淀屋橋のシューズショップ、tartaruga(タルタルガ)さんのサイト。
トップページにはワインレッドまでは渋くないけど真っ赤じゃない、少しトーンを落とした赤い背景色の真ん中にムービーが表示されている。ムービーには、白髪の男性と髪を結った女性の職人が靴を作るシーンが映されている。
職人が身につけるエプロンを見て推測するに、tartarugaさんのメインカラーが赤色なのだろう。
ムービーの周りには、ロゴ、ナビメニュー、サブのメニュー、キャッチコピーが白色で、右下にはおそらく白髪の職人の名前「Yoshihiko Matsumono」と筆記体で書かれたサインが置かれている。この部分だけ色はグレー(シルバーかな)。ニクい。
要素として多いテキスト項目が、たっぷりな余白を使い絶妙なバランスで配置されている。
このたっぷりな余白は、下にスクロールした部分をはじめ他のページに関しても用いられ、サイト全体の印象が上品で綺麗。
また、このサイトに掲載されている写真がどれも素晴らしい。
職人のすぐ側で撮られた作業風景、一歩離れたところから撮られた日常風景、店内に陳列された靴、人物・もの・空間を象徴的にトリミングされた写真など、視点のバリエーションが豊富だ。
それぞれの写真の近くには、実直でシンプルなキャッチコピーが置かれている。
その写真とキャッチコピーの相性が抜群にいい。明朝体のテキストならではの情緒もあり、お洒落。文字間&行間も繊細に考えられている。
これはあくまで僕の推測でしかないのだけど、tartarugaさんサイトは、デザイン(制作)も写真撮影も同じ人が担当されたのだろうと思った。そう思ったのは、サイトの構成&デザインにぴったりな写真が揃っている、いや、揃いすぎてると感じたから。
その他にも、賞賛すべき箇所がたくさんある。
靴づくりへのこだわりをきちんと理由付けて説明していたり、オーダーメイド特有の発注から完成までの流れを可愛らしいイラストをアクセントに分かりやすくまとめていたり、tartarugaさん独自のサービスや商品の魅力を余すとこなくきっちり整理されている。
tartarugaさんサイトは、オーダーメイドの靴を作り販売するという腕利きの職人にしかできない商売と真っ直ぐ向き合い真摯に制作された、クオリティーの高いWEBサイトだ。
以上、tartarugaさんサイトを観覧して感じたことを書いてきた。
シンパシーと賞賛、そして自省。
最後にひとつ。
僕がこのサイトを観覧して最も強く感じた心境は、シンパシー、共感だ。
なんとなく、同じくWEBを制作する者としてWEBサイトに求める価値観(あくまで僕の勝手な推測だけど)に親近感を感じた。
一方で、僕の目指す品質をはるかに上回る完成度の高いWEBサイトを見せつけられてしまった、と嘆く自分もいる。
賞賛&自省必須のWEBサイトを目の前に、幕内弁当の人参に箸を伸ばす僕なのであった。