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街で見掛けるデザインと故郷への思い

2019.06.14

街には誰かにデザインされたものがいっぱいある。

街を歩く時、職業柄かいろんなデザインに目を向ける機会が多い。
例えば、電車に乗ればつり革広告に目がいくし、ショッピングをする時はお店に置いてあるリーフレットやルックブックをあれば必ず手に取ってしまう。それ以外でも、食事をしようと寄ったレストランのメニューブックやお寺の前に掲げられた「樹木葬」の案内看板なんてものもそう。
広告とかPRとかブランディングとか用途や目的はいろいろあるのだろうけど、この世にいる誰かが撮影した写真やデザインしたものだということはそれだけで尊いものだ。ちょっと大げさだけど。

街には誰かにデザインされたものがいっぱいある。
初めて訪れる街、見たことのない風景やその土地ならではの気候や方言に心奪われながらも、見慣れたコンビニのサインを見るとなんだかホッとする。知らぬ間にデザインが記憶に刷り込まれてるんだなぁと感心してしまう。

故郷にまつわる小さな夢。

僕の故郷は岡山県笠岡市。
小さな街だ。

僕は18歳まで笠岡市で暮らした。
今では千鳥の大悟さんの生まれた北木島がある街として有名になった(?)けど、取り立てて目立つ街じゃない。だからといって古き良き街として思い出の風景がそのまま残っているわけでもない。
数年前に駅前に新しい居酒屋ができたし、駅前のロータリーはけっこう前に様変わりした。

駅から出ると飲食店やデイケアサービスなどの看板が目にうつる。僕が暮らしてた頃には無かったものも当然多い。お洒落と言えるものなんて何一つ無い。僕の好みとは違う、きっと僕のクライアントからはダメ出しを食らう、そんなデザインばかりだろう。
それがどうした、僕はこの街が好きだ。

1999年、僕はこの駅から電車に乗り、3駅隣の福山駅を出発する夜行バスで上京した。
当時の僕は、どんな心境でこの街を旅立ったのだろう。

今でも帰郷の度この駅を使う。
様変わりした駅前の様子を眺めても、当時の僕の姿をリアルに想像することは難しい。それと同じように、当時の僕はこれから歩む人生を想像できずにいたはずだ。

いつかこの街に関わる仕事がしたいと僕は思っている。僕がフリーとして活動している理由のひとつでもある。
この街で暮らすことはもう無いかもしれないけど、しれないから、その小さな夢を持ち続けていこうと思っている。

Web Designer

おおつか わたる

1980年 岡山県笠岡市生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業。 2013年の立ち上げより「Graphika inc.」に所属するかたわら、フリーのWEBデザイナーとして活動中。

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